菅首相の大ブーメラン「偽証罪に問われる証人喚問を」民主政権を鋭く追及

菅首相の大ブーメラン「偽証罪に問われる証人喚問を」民主政権を鋭く追及

木許はるみ

毎日新聞

衆院本会議で所信表明演説をする菅義偉首相=国会内で2020年10月26日午後2時23分、竹内幹撮影
衆院本会議で所信表明演説をする菅義偉首相=国会内で2020年10月26日午後2時23分、竹内幹撮影

 GoToトラベルの停止を発表しながら会食に出かけるなど、やることなすこと疑問だらけの菅義偉首相。ところが、自民党が野党だった10年前の菅氏のブログ「意志あれば道あり」をみると、実に切れ味鋭い政権批判を展開している。さて、前回のブーメラン発言3選に続き、時事芸人のプチ鹿島さんと菅政権を襲う新たなブーメランを紹介したい。【木許はるみ/統合デジタル取材センター】

 「お答えを差し控える」という答弁を自ら批判していた菅首相のブログ。菅直人政権の柳田稔元法相が、地元の会合で「法務大臣は個別事案については答えを差し控える、法と根拠に基づいて適切にやっている、この二つだけ覚えておけば良い。この二つだけ言っておけば国会を乗り切れる」と発言したことを「国民を冒涜(ぼうとく)する発言」と痛烈に批判した投稿である。

 このブログを読み進めると、さらに大きなブーメランが隠されていた。馬淵澄夫元国土交通相と北沢俊美元防衛相についての発言だ。

 <尖閣問題のビデオ映像流出について、馬渕国交大臣は第一報を受けた時間について虚偽の答弁をしました>

 <北沢防衛大臣も、自衛隊の行事に政治的発言をする人を呼ばないよう事務次官通達を出す指示をし、言論統制しようとする件で、失言と誤答弁を繰り返しました>

 プチ鹿島さんは「もう全部、今に通じていますよね。菅さんは未来を予言できるのではないかというくらいに」と驚きつつ感心し、桜を見る会の答弁を引き合いに出した。

プチ鹿島さん=ワタナベエンターテインメント提供
プチ鹿島さん=ワタナベエンターテインメント提供

 「虚偽答弁に言論統制……。桜を見る会で安倍(晋三)さんや菅さんの答弁はどうだったのか。言論統制も、ずばり日本学術会議の任命拒否の問題に重なります」

国会議事録に残るやりとり

記者会見に臨む菅義偉官房長官が持つ多くの資料には、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡るさまざまな項目が書かれた付箋がつけられていた=首相官邸で2019年11月29日、川田雅浩撮影
記者会見に臨む菅義偉官房長官が持つ多くの資料には、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡るさまざまな項目が書かれた付箋がつけられていた=首相官邸で2019年11月29日、川田雅浩撮影

 菅さんが正面から批判した「お答えを差し控える」という柳田氏の発言を巡り、当時の国会議事録を見ると、興味深いやりとりが見つかった。

 柳田氏の発言を国会で追及したのは同郷で元法相の河井克行被告だった。なんと、河井氏は「歴代の法務大臣に対する冒とく」と柳田氏を国会で批判していた。

 さらに自民党の世耕弘成参院幹事長も国会で取り上げ、議事録には「お答えを差し控えます」という発言が33回に上っているとカウントしていた。

 プチ鹿島さんは「オールスターがそろっています。河井さんと菅さん。セットで裏目ですね。政治家は野党から与党に回ると、過去に指摘していたことと同じようなことをしてしまうのでしょうか」とコメントする。

小沢一郎氏の「証人喚問」を要求

 菅首相のブログには、まだあった。2010年5月の投稿である。

 <(小沢氏が説明する政治倫理審査会は)国会で行うとはいえ、原則非公開で議事録も公開されず、虚偽の答弁をしても偽証罪にも問われません>

 資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反に関連し、小沢一郎・元民主党代表の説明責任を追及した。

 <潔白を主張するならば、偽証罪を問われる証人喚問に応え、公開の場で説明すべきです>

 そう、攻守逆転である。桜を見る会をめぐっては、野党が安倍晋三前首相の証人喚問を求めて同じように追及している。

 プチ鹿島さんが解説する。「安倍さんは秘書のせいにして、言い逃れをしようとしていますが、あれだけ野党からツッコまれているのに、これまで秘書の言い分を一度も疑わなかったのでしょうか。菅さんのもとには、杉田さん(杉田和博官房副長官)という公安畑の調査のプロの人がいます。それなのにホテルの領収証がないことを一度も疑ってないんでしょうか。虚偽と知りながら、答弁していたと疑ってしまいますよね」

就任後40日後の所信表明も

 11年9月の投稿にも考えさせられる。

13年当時、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」で、乾杯する安倍首相(左から2人目)と菅義偉官房長官(右)=東京都新宿区の新宿御苑で2013年4月20日(代表撮影)
13年当時、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」で、乾杯する安倍首相(左から2人目)と菅義偉官房長官(右)=東京都新宿区の新宿御苑で2013年4月20日(代表撮影)

 <復興対策を真剣に議論しようとする気概や内閣としての責任感は、微塵(みじん)も感じられません>

 野田政権が当初、国会日程を4日に設定し、予算委員会を省略して所信表明と代表質問のみとしたことを批判していた。

 その9年後、菅首相は所信表明すら就任から40日後だった。「菅さんはブログで復興対策を持ち出して民主党政権を批判していますが、今まさに新型コロナウイルス対策ですよね。対策を急がないといけないときに、政府の方針を打ち出す所信表明を40日も待つって……。何かツッコミを待っているのかなと思ってしますよね」とプチ鹿島さん。

 「菅首相がなぜ会見を開かなかったのかが不思議です。官邸のホームページに『会見』の情報がたくさん載っていますが、あんなの会見じゃないです。記者からツッコまれると背を向けて行ってしまう。首相官邸の通路に長いマイクが置いてあって、通りすがりの菅さんが話をする。東京・新橋でご機嫌なサラリーマンがインタビューに答えているのと同じですよ」と冗談交じりに指摘する。

 そして、12月4日、就任以来2度目の会見が、やっと開かれたと思えば、学術会議の会員選考の経緯について、不正確な内容を回答している。官房長官時代の会見で「事実に基づかない質問」と記者を批判していた菅さんはどこへ行ってしまったのか。

 それにしても、ブーメランだらけだ。

 プチ鹿島さんは「菅さんはまさか自分が首相になっているとは思わなかったんじゃないですか」と語る。

 「菅さんは主役というより名脇役。野中広務さんや亀井静香さんをはじめ、野党時代の自民党は、追及が鋭くて面白いんですよ。菅さんもそんな芸風だと思ったら、官房長官になり、総理にまで。まさに当時の発言がブーメランになって飛んでくるとは夢にも思っていなかったのではないでしょうか」

 さらに「菅さんはツッコミ、つまり追及する側としては最高です。いちいち具体的な例を出して、ツッコんでいく。かなり高い技術ですね。今これだけ情報発信が足りないと言われている菅さんですが、10年前には的確できめ細かな発信をしています。ブロガーとしても一流です。あの菅さんはどこに……」

記者会見で「桜を見る会」をめぐる質問で事務方からのメモを手にする菅義偉官房長官=首相官邸で2019年12月5日午前11時35分、佐々木順一撮影
記者会見で「桜を見る会」をめぐる質問で事務方からのメモを手にする菅義偉官房長官=首相官邸で2019年12月5日午前11時35分、佐々木順一撮影

 プチ鹿島さんはある意味、菅氏を評価している。「みなさん、今年はお正月も家で過ごす時間が多いと思うので、菅さんのブログを熟読してみると、すごく面白いですよ」と呼びかける。

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