
「桜を見る会」の前夜祭を巡る問題は、安倍晋三前首相(66)の金庫番である秘書が政治資金規正法違反(不記載)で略式起訴される事態に発展した。「議員を辞めるべきだ」「形式的な捜査だったのでは」。「言論の府」である国会でうその答弁を繰り返した前首相と、前首相の刑事責任を不問とした検察に対する怒りの声が渦巻いている。【大場弘行、島田信幸、内橋寿明】
「国民のみなさまに心からおわび申し上げます」
24日午後6時、東京・永田町の衆院第1議員会館で始まった記者会見。前首相は神妙な面もちで用意した紙を時折つかえながら読み上げた。配川博之・公設第1秘書(61)の略式起訴や国会で事実と異なる説明をしていたことについて「道義的責任を痛感」「深く深く反省」「深く深くおわび」といった反省の言葉を口にし、頭を3度下げた。
政治資金収支報告書に前夜祭の費用を記載していなかった理由は「東京と地元の事務所の連絡、連携が不十分であった」「私が知らない中で行われていた」などと語り、自らの関与を否定した。会見は50人程度でいっぱいになる会議室で1時間あまり続いた。広い場所で会見をしなかった理由を聞かれると「今のこの機会を利用して質問していただきたい」と返した。
前首相を刑事告発した弁護士らで作る「『桜を見る会』を追及する法律家の会」も同日、東京・霞が関で記者会見し「国会を空転させた安倍氏の責任は重い。謝罪だけでは済まず、国会議員を辞めていただきたい」と怒りをあらわにした。

同会は安倍氏のほかに秘書ら3人に対する捜査を東京地検に求めてきた。公設第1秘書の略式起訴は「事務所の関与はない」としてきた安倍氏の国会答弁を覆すことになり、世話人の泉沢章弁護士は「うその答弁を続けた安倍氏は政治家として不適格」と強調する。安倍氏側に「国民はどうせ忘れる」とのおごりがあったと指摘して、「虚偽答弁は野党だけでなく、国民がばかにされたことにほかならない。絶対に許してはだめだ」と憤った。
また、告発団体は安倍氏を不起訴とした東京地検も厳しく批判した。特捜部は不起訴の理由を「関与、共謀を認めるに足る証拠は得られなかった」と説明したものの、告発団体の小野寺義象事務局長は「捜索・差し押さえなどの強制捜査をしておらず、非常に残念な対応。安倍氏への事情聴取は起訴にできない裏付けをとるための形式的なものだったのではないか」と疑問を投げかける。
唯一刑事責任が問われた公設第1秘書も略式起訴にとどまり、今後、公開の法廷で事件の全体像が明らかにされる可能性は低くなった。泉沢弁護士は「秘書の責任にして略式起訴で終わらせることは大問題だ。不起訴の理由を分析して検察審査会への申し立てなどを検討したい」と述べた。
「当初から知っていたのでは」田原総一朗氏
前首相の会見をテレビ中継で見たジャーナリストの田原総一朗氏は淡々と説明を続ける姿に違和感を覚えたという。「秘書が虚偽の説明をしていたならば、それが判明した時点で直ちに秘書を解雇すべきだ。秘書への怒りが全く感じられず、当初から全容を把握していたと考えざるを得ない」とみる。
秘書が略式起訴され、前首相が不起訴となった結果を「安倍さんと検察との間の出来レースだ」と批判し、「国会で事実に反する答弁をしているのだから議員辞職すべきだ」と強調した。「今回の件で安倍さんの力は弱まる。再び総理になることはないだろう」と述べた。
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