第1回航空機「追い返せないか」 水際対策で世論気にした首相、狂った目算;毎日ディジタルから引用しています。

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「オミクロン株」の出現を受け、外国人の新規入国禁止などの措置を表明する岸田文雄首相=2021年11月29日午後1時19分、首相官邸、上田幸一撮影

第1回航空機「追い返せないか」 水際対策で世論気にした首相、狂った目算

森岡航平、笹山大志、小泉浩樹
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 岸田文雄首相はいら立っていた。

 「追い返せないか」。昨年11月26日、首相官邸幹部が「今夜も対象地域から1便入るようです」と伝えると首相が言った。

 この日、WHO(世界保健機関)は南アフリカで報告されたコロナウイルスの変異株を「オミクロン株」と命名。日本政府は、南アフリカなど周辺6カ国を対象に水際対策の強化を発表したばかりだった。

 岸田政権の発足から約2カ月。首相の脳裏をかすめたのは、コロナ対応が「後手」に回り、政権運営が窮地に陥った安倍・菅政権の失敗だった。2022年夏の参院選を安定政権の足がかりにしたい首相にとって、まさに初めて迎える正念場だった。

「いや、全部だ」 秘書官の提案、首相は首を振った

 自民党内の激しい政治抗争を経て首相が政権の座を手にしたのは昨年10月4日。コロナ対応を前面に掲げ、わずか10日余りで、「第6波」に向けた対策の大枠となる「全体像の骨格」を発表。感染力が「第5波」の2倍、3倍になるシナリオを想定したもので、「最悪の事態を想定した危機管理を行い、対策に万全を期す」と訴えた。

 衆院選に勝利した後、11月12日には、骨格を具体化した「全体像」を打ち出す。病床の増床や、病床の「見える化」、検査の拡充、治療薬の確保などを盛り込んだ。

 当時、菅前政権が注力したワクチン接種が進んだことなどから、感染は収まり、東京都の新規感染者数は、1日10人を下回る日もあった。水際対策では11月8日、原則停止していた海外のビジネス関係者や技能実習生らの新規入国を認めるなど大幅に緩和。コロナ禍の「出口」も見えかけた空気感だったが、コロナ対策に注力したのは「政権安定のためにはコロナ対策を国民に示す必要がある」(内閣官房幹部)との思いがあったからだ。

 しかし、「第6波」は突然襲いかかる。

 11月25日、南アフリカの保健当局が新たな変異株の出現を発表。官邸側は「首相のトップダウン」(官邸幹部)で、すぐに外務省などに水際対策強化を次々と指示した。変異株への対応を誤ると一気に求心力が低下しかねず、首相は警戒感を強めていた。

 翌26日には南アフリカやその周辺国など計6カ国に対する水際対策強化を表明。しかし、オミクロン株は、欧州やアジアで急速に拡大を続けていく。

 日曜日の28日。首相は松野博一官房長官首相秘書官らに電話などで相次いで連絡を取った。水際強化をどこまで広げるか――。対象国が広すぎると、混乱や経済界からの反発が予想された。一方で、小出しの対策では「後手」との批判を招きかねない。首相秘書官が「感染が広がっている地域を中心に対象を検討しましょうか」と話すと、首相は首を振った。「いや、(対象国は)全部だ」。

 首相の判断は、外国人の全面的な新規入国停止。主要7カ国(G7)で最も厳しい対応だった。そこから秘書官らがほぼ徹夜で調整にあたり、首相は翌29日、記者団に、年末までの「緊急避難的な予防措置」として、こう強調した。

 「慎重の上にも慎重に対応すべきと考えて政権運営を行っている。岸田は慎重すぎるという批判は私がすべて負う覚悟だ」

 日本国内初のオミクロン株の感染者が確認されたのはこの翌日だった。

 首相の決断は好意的に受け止められ、その後の内閣支持率の上昇をもたらす。官邸幹部は「うまくいっている」と自信を深めた。水際の強化策も官邸幹部は当初、「1カ月もすれば状況は見えてくる」と楽観していた。

 ところがこの目算はその後、狂い続ける。そして、この時の首相自身の「成功体験」が、世論を気にするあまり、ワクチン接種などの対応変更や出口戦略といった政治判断の足かせとなっていく。(森岡航平、笹山大志、小泉浩樹

     ◇

 政府は、新型コロナウイルス対応の「まん延防止等重点措置」の全面解除に踏み切った。オミクロン株の出現から全面解除までの約120日。岸田政権は、未知のウイルスにいかに対応し、向き合ってきたのか。その攻防の内実を検証する。

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