シャワーの下で彼女は泣いた 元収容者の女性の証言:毎日ディジタルから引用しています。

シャワーの下で彼女は泣いた 元収容者の女性の証言


新疆ウイグル自治区の収容施設での生活を語ったトゥルスナイ・ジヤウドゥンさん=米首都ワシントン郊外で2022年5月13日、隅俊之撮影拡大
新疆ウイグル自治区の収容施設での生活を語ったトゥルスナイ・ジヤウドゥンさん=米首都ワシントン郊外で2022年5月13日、隅俊之撮影

 中国新疆ウイグル自治区で少数民族のウイグル族らが「再教育施設」などに多数収容されている問題で、中国共産党幹部の発言記録や、収容施設の内部写真、2万人分以上の収容者リストなど、数万件の内部資料が流出した。「(当局に)挑む者がいればまず射殺せよ」などと指示する2018年当時の幹部の発言や資料からは、イスラム教を信仰するウイグル族らを広く脅威とみなし、習近平総書記(国家主席)の下、徹底して国家の安定維持を図る共産党の姿が浮かぶ。

 トゥルスナイ・ジヤウドゥン(43)は、中国新疆ウイグル自治区西部イリ・カザフ自治州キュネス県出身のウイグル族だ。「職業技能教育訓練センター」と呼ばれる地元の「再教育施設」で計9カ月を過ごした。2018年末に解放された彼女は今、米国の首都ワシントン郊外のアパートに暮らす。人々のうめき声が記憶から消えることはない。彼女自身が耐え抜いた屈辱と拷問のことも。

 1カ月を過ごし、体調が悪化した彼女はいったん解放されたが、18年3月に再び同じ「再教育施設」に入れられた。だが、そこは要塞(ようさい)のように変貌していた。高い壁があり、棟が増設されていた。収容施設の前には何台ものバスが並び、拘束された人々であふれかえっていた。

 監房の入り口は、小窓がある扉と鉄柵の二重になっていて、中に十数人がいた。監視カメラが三つ設置され、トイレは太ももの高さの目隠しがあるだけ。それも頭上の監視カメラから丸見えの状態だった。監房の前には常に防弾チョッキ姿で銃を持った完全武装の看守が2人。収容者同士で会話することも禁じられていた。

 尋問では警察官らに「カザフスタンで何をしていたのか」「グループと関わっているのか」と繰り返し聞かれた。何のことを言っているのかも分からず、「何も知らない」と答えると、殴られた。「質問されても、(彼らがほしい)答えは持っていない。どのみち拷問を受けるのです」。「虎の椅子」と呼ばれる身動きできない椅子に座らされ、足の親指の爪に鉄線のようなものを差し込まれた。水を全身にかけられ、腹部を蹴られた。

 「10回の尋問があれば、10種類の拷問、侮辱、いじめ、暴行があった。彼らにとって、侮辱やいじめ、暴行は『普通のこと』だった」。尋問に連れて行かれる途中、別の部屋の扉の隙間(すきま)から、ハサンという名の同郷のイマーム(イスラム教指導者)が天井からつり下げられているのが見えたことがある。体から血が流れ落ちていた。彼女は取材中、そうしたいくつもの目撃した拷問を語った。

 ジヤウドゥンは解放後に到着した米国で、出血で診察を受けた病院で腫瘍が見つかり、子宮の摘出手術を受けた。中国当局は否定したが、暴行の影響とみられる。そして、女性として耐えがたい拷問も収容所で受けた。

収容されていたという「再教育施設」の写真をスマートフォンで指さすトゥルスナイ・ジヤウドゥンさん=米首都ワシントン郊外で2022年5月13日、隅俊之撮影拡大
収容されていたという「再教育施設」の写真をスマートフォンで指さすトゥルスナイ・ジヤウドゥンさん=米首都ワシントン郊外で2022年5月13日、隅俊之撮影

 ある時、同じ監房の女性が、3日半帰ってこないことがあった。中国政府の出産制限策に反して子どもを6人産んだとして収容されていた。戻ってきた彼女は全身にあざや、犬にかまれたような傷があった。

 施設では泣くことも許されない。シャワーから落ちる冷たい水の下で、彼女は泣いていた。面倒を見るよう看守に指示されたジヤウドゥンは、抱きしめて何があったのか尋ねた。彼女は何も言わなかった。

 ただ、何が起きたのか、ジヤウドゥンは分かっていた。「私自身にも起きたことだったから」。彼女も警察官による、レイプを含む性的拷問を3度受けた、と記者に語った。そのうち1度は、電気棒を使ったものだったという。

 「再教育施設」から解放されたのは18年12月。「これで終わりだ」と言われた。カザフスタンに戻っていた夫が働きかけをしていたことを知った。19年9月にカザフスタンに出国。その直前、ビデオを撮影した。メークアップをされ、笑顔で話せと言われた。当局側が用意した原稿を覚えさせられ「中国は素晴らしい。私には何も起きていない」などと話す映像を撮られた。

 米国に逃れたジヤウドゥンはこれまでに英BBCなどの取材に応じ、米連邦議会でも経験を証言してきた。新疆では収容者が解放されても、周囲は怖がって話しかけたり、目を合わせたりするのも避けるという。「人は外に出たとしても廃人のようになる。考える力も、人生の目的もなく、ただ生きているだけになるのです」。取材の最後にこう語った。

 「収容施設にいる人たちを救いたいと以前言った。けれど、実際に救うことはできない。それでも証言を続けるのは、私たちの次の世代を救いたいから。せめて残りの人々を救いたいから」【ニューヨーク隅俊之】

   ◇

 中国外務省は21年2月の定例記者会見で「中国を中傷し攻撃するために一部勢力に利用されている『役者』に過ぎない」と証言を否定。ジヤウドゥンがカザフスタンでネットメディア・バズフィードニュースの取材を受けた際、性的暴行を受けたことを話しておらず、米国での証言は「捏造(ねつぞう)」だとしている。ジヤウドゥンは「その時点ではまだ中国当局からの圧力を感じており、カザフスタンですべてを話せば身の危険があった」とし、米国で身の安全が確保できたから証言できるようになったと話している。(敬称略)

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