アメリカのインフレもさることながら、日本でも物価の高騰が続いています。それなのに賃金は上がることもなく、このままでは景気上昇の目処は立たないと思われます。今回のメルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』では著者で現役医師の和田秀樹さんが、 昔と今を比べ、なぜ日本の不景気は続くのかを分析しています。
マスコミの忖度とダブルスタンダード
アメリカがものすごいインフレになっている話をテレビ各局が取り上げている。確かにラーメンが3,000円、ビッグマックのセットが1,500円というのは強烈だ。
それどころか年功序列、終身雇用がいまだに続いているから給料を上げられないというわけのわからない理屈まででてくる。
そして多くの中小企業の社長たちもいまだにかなり贅沢な生活をしていることにも触れない。
私の見るところ、今の不景気は金持ちがケチだから起こっている不況だ。昔の経営者は従業員の給料を上げ続けていた。今と比べ物にならないくらい経営者と一般従業員の給与格差は小さかった。
終身雇用、年功序列という安心感もあったので、将来不安もなく、ボーナスという制度もあいまって多少高いものでも買えた。
VHSデッキが本格的に売れた1977年当時、1ドル250円くらいで、アメリカ製のビデオデッキは1,000ドル、日本製は25万円くらいで同じくらいの価格だった。
当時、アメリカ人の平均所得は日本の倍くらいあったが、日本ではVHSが売れ、アメリカのものは売れなかった。そしてVHSが世界のデファクトスタンダードになった。
1950年代(当時の最高税率は91%だった)のアメリカも同じことだが、高くてもいいものを買う国民がいる国の製造業が世界で勝つ。国民が貧乏だと安いものしか売れないので、イノベーションが起こりにくい。
ドイツもヒトラーが高給与政策をとり、ドイツ車が戦前から普及した。
経済がよくなってから給与を上げるというのは金持ちのミカタのマスコミのいうセリフで、先に給与を上げないと景気がよくなるはずがない(と私は信じている)。少なくとも歴史はそう語っている。
給与を増やして、従業員の質を上げれば時価総額も上がるのに、それをしようという経営者がいない。ケチが染みついているのである。
昔の経営者は貧乏から這い上がっているので、庶民の気持ちがわかるし、給料を上げる意味もわかっていた。
二世三世の経営者が増えると、親からの財産を守らないといけないという意識も強いから典型的なケチな金持ちになるし、貧乏人の気持ちがわからないから平気でリストラをし、従業員の給与は上げない。
私は高齢者の消費を増やすために相続税100%論者だが、こういうケチな二世三世の思考を改めるためにも相続税100%論をますます信じるようになった。
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