スウェーデン救った「子への投資は国の将来への投資」

スウェーデン救った「子への投資は国の将来への投資」

人口と世界 ストックホルム大学准教授 リビア・オラー氏

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池上彰
人口減少が加速するなか、対策に乗り出し成果を上げている国がある。少子高齢化や労働力不足にどう対抗するのか。各国の専門家に聞いた。

――スウェーデンは1930年代、深刻な出生率の低下に直面しました。


ストックホルム大学准教授 リビア・オラー氏

「世界的な不況だったとはいえ、当時の出生率は1.7とかつて経験したことがないほど低かった。誰もが答えを模索するなか、脚光を浴びたのが1934年にグンナーとアルバ・ミュルダール夫妻が出版し、出生率を再び高めるためにどうすべきか示した『人口問題の危機』という本だ」

――ミュルダールのどんな主張が画期的だったのですか。

「当時は多くの女性が働くようになり、それが少子化の原因になっているとみなされていた。働く女性が仕事を辞めず出産しないことを問題視し、出生率低下の責任は女性にあるとされた」

「ミュルダールはこれを覆し、働く女性が子供を産み育てるのが難しい社会の方に問題があると主張した。子育ての責任やコストは社会全体で負うべきで、政府は補助金を投入し、質の高い公的な保育サービスを提供すべきだという考えだ。未来の労働者である子供に投資するのは、国の将来への投資とみなした。これは現代のスウェーデンの家族政策の礎だ」

――出生率の向上に影響を与えた政策はありますか。

「1971年、家族ごとに課税する制度から個人ごとの課税制度に変えた。性別や婚姻状況にかかわらず、すべての人が自らの分の税金を払うことになり、既婚女性も自分の所得を持とうというインセンティブが働いた」

「多くの女性が働きだしたため、出生率はいったん落ち込んだ。政策立案者はミュルダールの提案に立ち返るべきだと考え、70年代に公的な保育制度を構築し始めた。2002年にはマックス・タクサという制度を導入し、親が払う保育料に上限を設けた。第1子の場合、世帯収入の3%までと決まっている」

――男性の育児参加も重要です。

「世界に先駆けて男性も取得可能な育児休業制度を74年に導入した。95年には育児休暇の一定割合を父親と母親のそれぞれに割り当てる制度を導入し、父親の育児参加を高めるきっかけになった。父親の休暇は母親に移すことができず、父親に割り当てられた休暇の消化を促した」

「この制度があるため、雇用主は父親も育児休暇を取らざるを得ないと理解する。いまや男性も雇用主と育休の取得交渉をするようになり、女性の職場での立場が良くなる。これは労働市場が男女平等を実現するための重要なステップにもなる」

(聞き手は今橋瑠璃華)

Livia Olah 社会学、人口学が専門。家族政策にも詳しい。2006年からスウェーデン・ストックホルム大学の准教授。ハンガリー生まれ。

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