外出自粛でも「昼飲み」はOK? 宣言再発令、なぜちぐはぐな対応が生まれたのか:毎日ディジタルから引用しています。

外出自粛でも「昼飲み」はOK? 宣言再発令、なぜちぐはぐな対応が生まれたのか:毎日ディジタルから引用しています。

吉田卓矢坂井隆之

毎日新聞

緊急事態宣言再発令後、初めて迎えた週末に銀座を歩く人たち=東京都中央区で2021年1月9日午後1時25分、宮間俊樹撮影
緊急事態宣言再発令後、初めて迎えた週末に銀座を歩く人たち=東京都中央区で2021年1月9日午後1時25分、宮間俊樹撮影

 夜はダメでも、「昼飲み」ならOK――? そんな間違った“解釈”が広がっているようだ。政府は8日に首都圏の1都3県で緊急事態宣言を再発令し、13日には大阪、愛知、福岡など7府県に広げた。ただ、要請の際に「夜間の自粛」が前面に出されたこともあり、11日までの3連休の日中の人出は、昨年の緊急事態宣言後を大きく上回った。なぜこんなちぐはぐなことになってしまうのか。危機時の情報伝達について研究するリスクコミュニケーションの専門家に、宣言後の現象について読み解いてもらった。【吉田卓矢、坂井隆之/統合デジタル取材センター】

ランチビールで送別会 「昼ならいいと思って」

 それは違和感のある風景だった。首都圏で緊急事態宣言が出た1月8日、東京・千代田区のJR駅そばのレストラン。4人の男性がビールなど片手にランチを楽しんでいた。聞くと、4人は同じ会社の同僚。このうち1人が転職するので、その送別会だという。

 40代の男性は「本当は夜にやる予定だったけど、緊急事態宣言で『飲食店営業は8時まで』と聞いたので、昼に変えました」。夜でも昼でも感染リスクは変わりないはずだが、「大人数ではないし、時間も夜に比べたら短時間。政府も完全に会食をやめろと言っているわけではないですよね……」と苦笑いを浮かべた。会社には内緒だという。

 見れば、店内は午後1時を過ぎても半分以上の席は埋まっており、会社員や家族連れが食事を楽しんでいた。ワインを手にしている客もいる。「親しい者同士で昼ならOK」という暗黙のルールがあるかのようだ。緊急事態宣言の初日という緊張感は感じられなかった。

 こうした状況はデータでも裏付けられる。9日から始まった宣言直後の3連休の人出のデータによると、日中の人の流れは昨年4月の緊急事態宣言発令直後に比べて大幅に上回った。ツイッター上では「『夜20時以降の外出は控えましょう』では、そりゃ日中の人出は減らないよね」「店は開いていることも人出が減らない要因かと」などの声が出ている。

緊急事態宣言の対象地域に追加された京都の四条大橋を歩く人たち=京都市で2021年1月14日午前9時14分、山崎一輝撮影
緊急事態宣言の対象地域に追加された京都の四条大橋を歩く人たち=京都市で2021年1月14日午前9時14分、山崎一輝撮影

 お店の側は、どう思っているのだろう。

 「お昼の来客は、緊急事態宣言後も減っていません」。こう話すのは、東京都杉並区のイタリア料理店「ラ・ピッコラ・ターヴォラ」の小室心平店長だ。

 昨春の1回目の緊急事態宣言の際、小室さんの店は終日休業という道を選んだ。宣言解除後は、検温やアルコール消毒の徹底、客席の間引き、スマートフォンメニューの導入、テークアウトメニューの充実などの対策を取って営業を再開。売り上げは順調に回復していた。そして今月8日の2度目の緊急事態宣言。今回は閉店時間を午後10時半から午後8時に短縮する一方で、感染対策を実施していることを踏まえ、日中の営業は続けている。夜の来店客は「ほぼいなくなった」と語るが、昼間の客を支えに、売り上げの減少幅は昨年比30~40%で踏みとどまっているという。小室さんは「昼のお客様でもっています」と語る。

「昼もやめて」 閣僚が相次ぎ警告

 日中の人出が思うように抑えられていない状況を見て、政府は慌てて昼の会食に「待った」をかけ始めている。田村憲久厚生労働相は12日の閣議後記者会見で、「昼間にお酒を飲んで騒いでいいのか、という話もあるが、いいわけありません」と強調。営業短縮を要請した午後8時以降だけでなく、それ以外の時間帯についても、感染リスクの高い飲酒を伴った会食や不要不急の外出を避けるよう求めた。

 西村康稔経済再生担当相も12日、記者団に対して「誤解もあるが、昼間も含めて外出自粛をお願いしている。昼食はみんなと一緒に食べてもリスクが低いということではない」と注意を呼びかけた。さらに菅義偉首相も、緊急事態宣言対象地域を拡大した13日の記者会見で、不要不急の外出について「飲食店が閉まる夜8時以降だけではなく、日中も控えていただくようお願いする」と念を押した。

 西村氏の言うように、そもそも政府が8日に発令した緊急事態宣言は、①不要不急の外出や移動の自粛②飲食店やカラオケボックスなどの午後8時までの営業時間短縮と、酒類の提供を午前11時~午後7時に限定③出勤者数の7割削減と、午後8時以降の勤務抑制――などを求めている。当然ながら「昼なら会食してもいい」とは書いていない。しかし、要請の中で営業自粛の時間が明記され、「夜間の飲食自粛」が前面に出された結果、昼間の外出自粛要請の印象が希薄になったようだ。

 ここにきて「昼の会食もやめて」と閣僚らが強調することに、飲食店側からは反発も出ている。レストランチェーン大手サイゼリヤの堀埜一成社長は13日の決算記者会見で、「きょうまた、ランチがどうのこうのと言われて、ふざけんなよ、と。恐ろしいのが、大手が潰れることなんです」と不満をあらわにした。

 前述のイタリア料理店店長の小室さんも「私たちもコロナを早く収束させて売り上げを戻したい。十分な補償をセットにした要請をきちんと出していただければ、宣言期間中に店を閉めるなどの協力もできるのですが」と心配顔で話す。

 グルメ検索サービス運営会社のサラ(東京都台東区)によると、昨年、「居酒屋」とともに検索された言葉の上昇ランキングの3位は「定食」、9位は「弁当」だった。担当者は「コロナ禍で居酒屋などの飲食店はランチやテークアウトに力を入れて、ぎりぎりのところで頑張ってきた」と話し、相次ぐ閣僚の「昼間も自粛」発言の影響を心配する。


「受け手に判断を委ねるような表現はダメ」

 一筋縄ではいかない「ランチ会食自粛要請」。だが医療崩壊が現実の脅威となる中で、昼夜を問わず、人出の抑制が急務なのは間違いない。政府はどのようなコミュニケーションをすべきだったのか。

緊急事態宣言の発令について記者会見する菅義偉首相の映像を流す街頭ビジョン=東京都新宿区で2021年1月7日午後6時12分、宮武祐希撮影
緊急事態宣言の発令について記者会見する菅義偉首相の映像を流す街頭ビジョン=東京都新宿区で2021年1月7日午後6時12分、宮武祐希撮影

 2回目の緊急事態宣言とその後の一連の政府の情報発信について、リスクコミュニケーションなどに詳しい帝京大学の石川ひろの教授(ヘルスコミュニケーション学)は、「当初の要請が曖昧な伝え方だったため、受け手に判断を委ねてしまっていて、受け手がそれぞれ独自に解釈をできる余地を生んでしまいました」と指摘する。

 確かに7日の記者会見では、菅首相が冒頭、「第一に飲食店の20時までの時間短縮、第二にテレワークによる出勤者数7割減、第三に20時以降不要不急の外出の自粛、第四にスポーツ観戦、コンサートなどの入場制限であります」と列挙したものの、その後の説明では昼間の外出自粛や昼間の会食への直接の言及はなかった。小池百合子東京都知事の同日の記者会見でも、モニターに映し出されたスライドには「不要不急の外出は自粛してください。特に、20時以降の外出はやめてください」と強調されていた。本来重要なのは多人数の、特に飲酒を伴う会食のはずなのに、メッセージとして「時間」が前面に出された結果、明言しない言外の意味は一人一人に判断を委ねる形になってしまったわけだ。

 「国民の中には自粛疲れもありますし、経済や感染予防に対する価値観も人によってさまざまです。そのため、一人一人の判断もその価値観によって変わってきます。例えば、自粛要請で困っている店を助けたいと思っている人は、『夜がだめなら、お昼に飲みに行ってあげよう』となってしまいます。政府は『昼か夜か』ではなく、そもそも会食を控えるように明確に伝えるべきでした」

 その後の相次ぐ関係閣僚の昼間の飲食や会食の自粛要請についても、石川教授は苦言を呈する。「本当に昼間の会食や外出もストップさせたいのであれば、飲食店への追加補償なども合わせて明確に伝えるべきです。飲食店には午後8時まで店を開けていいと言いながら、消費者には昼も自粛を求めるというのは矛盾したメッセージに聞こえ、政府が国民に何を求めたいのかはっきりしません」

 菅義偉首相自身が昨年12月、5人以上の会食を控えるよう国民に呼びかけておきながら、自民党の二階俊博幹事長らと8人で夜の会食をしたことは記憶に新しい。GoToトラベルの継続にこだわり、経済優先の姿勢を前面に出していたのも首相自身だ。「ランチ会食はOK」と一部の国民が思うのは、こうした政治家の本音を「正しく」理解しているせいかもしれない。

 石川教授は言う。「政府のメッセージがぶれるのは、実は政府自体がどうしていくべきか明確に分かっていないからなのかもしれません。『どう伝えるか』以前に、『何を伝えるか』がはっきりしていなければ、国民が理解するのは難しい」。感染拡大や医療崩壊を防ぐために、国民は何を優先し、どうしていくべきなのか。政府はいま一度きちんと整理した上で、国民に明確な言葉で協力を求めるべきではないか。

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