政府も認めた「賃金上がらず結婚できず」の厳しい現実:毎日ディジタルから引用しています。

政府も認めた「賃金上がらず結婚できず」の厳しい現実

渡辺精一 / 経済プレミア編集部2022年4月30日
 
 

 なぜ賃金は上がらないのか――。バブル崩壊後の長期低迷を経て、2010年代は人手不足に陥っても、日本ではなお賃金水準が停滞している。そうしたなか内閣府は22年3月、賃金上昇どころか、働き盛り世帯ではここ25年間で年間所得が百数十万円減っているという衝撃の分析を示した。「安いニッポン」の厳しい現実だ。

世帯所得「135万円減」の衝撃

 内閣府は、総務省「全国家計構造調査」「全国消費実態調査」の個別データをもとに1994~2019年の世帯所得の変化を分析した。政府は今年の「骨太の方針」に「人への投資」の強化策を盛り込む予定で、その基礎資料として3月3日の経済財政諮問会議に提出した。

 それによると、全世帯の年間所得の中央値は94年の550万円から19年は372万円と32%(178万円)下がった。

 中央値とは、全世帯を所得順に並べたとき真ん中にある世帯の所得の値だ。統計では、平均値を使うことが多いが、格差が大きい状況では、平均値は一部の富裕層の所得に影響されて「普通の人」の所得よりずっと高くなってしまう。中央値はそうした影響を受けにくく、実態をより示しやすい。

 また、社会保障や税には所得の再分配機能がある。所得の高い人は税負担が大きく、社会保障を通じて所得の低い人に還元する仕組みだ。所得再分配を加味しても、中央値は509万円から374万円へ27%(135万円)下がっている。

 ただし、この間、世帯構造が大きく変わったことには注意が必要だ。総世帯数は94年の4367万世帯から19年は5853万世帯と34%増え、65歳以上の高齢者世帯が20%から36%へ、単身世帯は26%から38%へそれぞれ拡大するなど中身も変わった。

 一般に、年金に頼る高齢者は現役世代より所得が低く、家族より単身のほうが稼ぐ力は限られる。内閣府は、所得減少の要因を「高齢者世帯や単身世帯が増え、低所得層の割合が上昇したため」と説明する。

内閣府資料「我が国の所得・就業構造について」
内閣府資料「我が国の所得・就業構造について」

非正規雇用の「所得300万円の壁」

 世帯所得の変化は、世代別にみると問題点がより明確になる。

 25歳から10歳ごとに世代を五つに区切ると(「65歳以上」は1区分)、全世代で所得の中央値は減少した。再分配後では「35~44歳」は569万円から465万円へ104万円減、「45~54歳」は697万円から513万円へ184万円減と大きく下がった。

 19年時点の「35~44歳」は、バブル崩壊後の93~05年に学卒期を迎え、就職が厳しかった「就職氷河期世代」とほぼ重なる。

 この「35~44歳」の単身世帯だけをみると、94年は所得500万円台が最多だったが、19年は300万円台が最も多い。特に非正規雇用労働者では200万円台が最多で「所得300万円の壁」が立ちはだかっていることがわかる。

内閣府資料「我が国の所得・就業構造について」
内閣府資料「我が国の所得・就業構造について」

 氷河期世代より若い層も、非正規雇用の増加が影を落とす。

 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、新卒者の初任給はここ25年で引き上げられてきた。19年の大卒平均は男性21万2800円、女性20万6900円と94年に比べ男女とも約1割高い。

 ところが、そうして若年層の賃金のベースは上がったはずなのに、「25~34歳」の世帯所得の中央値は405万円から351万円へ54万円も下がっている。

 「25~34歳」についても、単身世帯だけをみると、所得300万~400万円台が中心であるのは変わらないが、全体に占める割合は6割超から約5割に下がり、200万円台と500万円台の割合が上昇するなど、ばらつきが広がっていることがわかる。若年層でも非正規雇用の割合が高まり、低所得層を増やしている。

 日本では、年齢とともに賃金が上昇する年功序列型の雇用慣行がある。しかし、全世帯でみると、世帯主の平均所得は、年齢に応じて増加する傾向が弱まっている。

内閣府資料「我が国の所得・就業構造について」
内閣府資料「我が国の所得・就業構造について」

子のない夫婦は「パワーカップル」で稼ぐ

 子育て世代にあたる「49歳以下」世帯について、配偶者の所得分布をみると、共働きの割合は高まったが、配偶者が正規雇用か非正規雇用かで世帯所得の二極化が進んでいる。

 「夫婦だけ」の世帯と「夫婦と子」の世帯を比べると、配偶者の所得は50万~100万円の世帯が最も多く、非正規で働く配偶者が多い傾向はここ25年間でもほとんど変わらない。

 これは、パートやアルバイトで働く配偶者に所得税がかかるかどうかの線引きである「年収103万円の壁」や、社会保険の加入対象になるかどうかの線引きである「年収130万円の壁」などが影響しているためだろう。

 ただし、「夫婦だけ」の世帯では、正規雇用の配偶者の割合が増え、高所得世帯ほどその割合が増える傾向が明確だ。一方「夫婦と子」の世帯で大きな変化はない。子のない夫婦は、ともに高収入を稼ぐ「パワーカップル」が広がっているが、子育て世帯は配偶者が非正規で働いて家計を支えるという構図が見て取れる。

 非正規雇用が広がって低所得層が増え、結婚しない単身化が進んでいる。就職氷河期世代の単身者の多くは「所得300万円の壁」が超えられない。正規雇用でも所得は大きく減っている。共働きは増えたが、子育て世帯では妻がパートやアルバイトで働いて家計を支え、子のない夫婦はバリバリ稼いでいる――。内閣府の分析をまとめれば、こうした結論になる。

 少子化の進行については、この20年間、晩婚化や未婚化などさまざまな分析がされてきた。だが、内閣府が示した所得や就業の分析をみれば、日本で子どもが減るのは当然の帰結だろう。

 <「人生100年時代のライフ&マネー」は毎週月曜日更新です>

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント